■イタリアの喫茶店やレストランに入ると、禁煙マークの描かれた警告文が壁に掲げられているのを目にします。
屋内での喫煙を事実上禁止する禁煙法が、今年1月に施行されたためです。
公共施設や職場、飲食店などでは、厳密な基準を満たす廃棄・空調設備を備えた完全分煙の喫煙場所以外では、たばこを吸うことができません。
違反者には3800円から最高3万8000円の罰金が課され、子どもや妊婦の前で吸った場合には金額が倍に。
自由奔放に人生を楽しむのが国民性という印象のイタリアですら、徹底したたばこ規制に乗りだしたことには驚かされるが、むしろこれが世界の潮流。
もっとも、一歩外に出た屋外のテーブルでは自由に吸えるし、路上や駅のホームなどの灰皿のない場所でのポイ捨ても目につきます。
「外で吸うから問題ない」とある男性。
店側でも、客がたばこを吸ったからといって正直に当局に通報しては、「商売に響く」との声もあり、柔軟さもあるようです。
イタリアの喫煙率は男性31%、女性17%。
男性がやっと50%を切った喫煙大国日本に比べれば低いとはいえ、若者、中でも女性の喫煙率は25%と高いといった問題も抱えています。
喫煙率の低下に今回の規制がどこまで効果があるかは未知数だが、「少なくとも意識改革のきっかけになる」と、ミラノ郊外の心臓専門医は期待しています。
昨年3月に公共施設や飲食店などの全面禁煙に踏み切ったアイルランドの1年後の調査結果が、先月コペンハーゲンで開かれた欧州呼吸器学会で報告されています。
たばこの煙でくもっていた居酒屋の空気は、粉じんが5割から9割も減少。
従業員が訴える息苦しさなどの症状は約4割減り、たばこを吸わない人の呼吸機能は10%改善しました。
調査をしたダブリン大の教授は、「全面禁煙の効果が実証できた」と話します。
同学会で、ぜんそくなどと並び各国からの発表が相次いだのは、「たばこ病」と呼ばれるCOPD(慢性閉塞性肺疾患)。
長年の喫煙習慣によって肺でガス交換を行う小さな袋が壊れ、慢性的な息苦しさに陥ります。
高齢化社会の生活の質を著しく落とす病気で、日本でも増えています。
日本と共にたばこ対策が遅れた国として挙げられることの多いドイツでも、昨年1月から2007年1月までに、タバコ税を25%引き上げ、喫煙率低下を狙っています。
タバコ規制が進む世界で、日本だけが取り残されているようです。
(10月25日付読売新聞朝刊 医療ルネサンス No3720 「健康へのデザイン」欧州報告 3より)