結婚力養成講座:
■「別れよう」 周りのざわめきが、止んだ。
「え?」 彼女は、わが耳を疑った。
「僕より、もっと君にふさわしい男がいると思う」
思わず、間の抜けた声を上げてしまった。
「はあ?」 時間も止まった。
「君との婚約を、解消したい」
「・・・・・・・」
すぐに、次のことばを出せなかった。代わりに、心の奥で叫んだ。
(なぜだっ?!)
●◎●◎●◎●◎●◎●◎●◎●◎●◎●◎●◎
■時は、2006年3月31日。
ちょうど半年前、彼女は彼と見合いをした。
2005年9月30日。
彼女はその頃、恋に慎重になり始める年頃になっていた。
■29才、学生時代から今のOL時代を通じて、
人並みにいくつかの恋愛も重ねてきた。

■でも、その結果わかったことは、恋愛はどんなにドキドキ・
ワクワクしても、結局はプロセスでしかない、ということだった。
もうそろそろ、「恋愛」という名のレースのゴール・テープを
切りたくなってきた。
結婚そのものというより、結婚の可能性を含む出会いだ。
だから、手っ取り早くお見合いを選んだ。
そして、いまの彼と出会った。
初めて会った瞬間に、ビビビッと電気が走った。
きっと、彼こそ、わたしと赤い糸がつながっている人に違いない。
つき合い始めて3ヶ月目、去年の大晦日にプロポーズされた。
■彼とのつき合いが、恋愛だけでなく、結婚という結果を得られる
ものだったということに、彼女はどれほどホッとしたことだろう。
結婚するなら彼しかいないと、見合当日には既に確信していた。
条件は理想的。高収入、高学歴、高身長、次男。
けれども、正直を言えば、すぐ結婚したいと思っていたわけではなかった。
もちろん、彼といつかは結婚したいし、子供も欲しい。
彼を、心から愛している。
■だけど、できたらあと2年、せめて1年、今の環境で仕事を
続けたいのが本音だった。
■彼女は、今の仕事に十分満足していた。女にとって、
30才は一つの節目と言われている。
■彼女にも、やはり30までには結婚しないといけないという
思い込みがあった。
■それを過ぎたら、もう結婚相手など現れないのではないか、
そんな怖れを感じて結婚相手探しに躍起になっていたのが
去年の今頃だった。
でも、この半年、余裕で笑って受け流していた。
結婚を約束してくれた、この人がいたからである。
いつかは必ずするけど、今年はまだしなくていいい。
彼がいてくれたからこそ、この半年、彼女は輝いていられた。
その彼が、突然「別れよう」と言ってきた。
そんなことがあるはずがない。
(ウソだっ!)・・・・あっては、ならない。
■見合いから半年がたち、仕事も落ち着いて、来年始めには
そろそろと考え始めたところだった。
ナンだかんだと言ったって、あの人がわたしと別れたいはずがない。
お互い似た者同士だとも言ってくれた。
この半年間、たくさんメールも交わした。
そんなに簡単に無かったことにできるような、そんな半年間ではない。
■もう、彼と彼女は一対のようなものだ。30才、
売れ残りだなんて、ちっとも思っていない。
■若いだけの新卒の女の子たちにも、もちろんコンプレックスは
感じていない。
仕事が、充実していたから。
仕事が、面白かったから。仕事と共に、毎日を夢中で過ごせていたから。
余計な事を気にしている暇はなかった。
今の仕事は、頑張ればそれだけ結果が出た。
■最近、自分の提案が採用されたり、評価されたりするようになった
ことが、新入社員時代には経験したことのない満足感をもたらして
くれていた。
ようやく、自分の夢と、職場での評価が一致してきたなという思いがある。
それには、もちろん、婚約者の存在を抜きにすることはできない。
■仕事は楽しかったし、やりがいも感じていたが、たとえどんなに
仕事ができても、「結婚のできない女」にはなりたくなかった。
■彼がいてくれたお陰で、結婚をあきらめた成れの果てで、
なりふり構わず仕事に打ち込む30女を演じるたくはなかった。
■充実した仕事と結婚の約束、この二つを半年間手にしていた
からこそ、とっても、幸せだった。
なのに、目の前のその彼が、今、別れようと言っている。
不意に彼の言葉が浮かんだ。去年の大晦日、プロポーズされた時の言葉だ。
彼女は、結婚を承諾した。
「仕事の都合で、せめて1年待ってくれたら」
ところが、眉をひそめながら、彼からこう言われた。
「君にとって、僕は、結婚は、2番目なのか?」びっくりした。
そんな言い方をされるなんて思ってもいなかった。
■彼女自身、彼にそんな質問をしたことはなかったし、
しようと思ったこともなかった。
しても無意味なことだと知っているからだ。
■次元の違うものを、比較しようとすること自体に無理がある、
と思っていた。
■そう、おとなが小さな子供に、「パパとママと、どっちが好き?」
とたずねる、あの質問である。
賢い子供からの正しい答えは、「どっちも好き!」である。
■優劣が付けられないものに優先順位をつけさせようとするから、
無駄な葛藤が起きる。
今の日本はいつだってそうだ。
女は、いつのまにか仕事か結婚かの選択を強いられてしまう。
■両方とも手にする、手にしたいってことは、そんなに
身の程知らず、傲慢なことなのだろうか。
■彼女は今の仕事を一生続けていくつもりだし、彼もそのことは
理解してくれていると思っていた。
しかし、どうやら内心では抵抗があったようである。
■女なんだから、とか女のくせに、などというセリフを上司から
言われたとしても、聞き流すことはできるが、わたしの婚約者には
言って欲しくなかった。
■生涯を共にするパートナーだからこそ、男女間にフェアな意識を
もつ男性であって欲しかった。
■つまり、そういうことなのだろうか?そういうところが、
この3ヶ月間、彼はガマン出来なかったのだろうか?

◆大丈夫だと信じている。
きっとすぐに元のさやに納まるに違いない。
■そんな、簡単に別れてしまえるようなつき合い方は、この半年、
してこなかったはずだ。
■だけど、今もし彼を、否、結婚相手を失ったらこれからの私の人生、
少なくとも30代がどうなるのか、想像もできない。
この半年間を、過去のなつかしい思い出になんか、絶対にしたくない。
絶対、絶対、絶対、ぜったいこの半年間を未来に残したい。
◆ふん、たかが、婚約解消ではないか。
婚約者は失ってしまっても、すべてを失ったわけじゃあない。
私には仕事がある。私が頼れるのは、この仕事。
今の職場での信用や信頼は、絶対失いたくない。
■結婚のことしか頭にない女なんて思われるのは、
とってもとっても恥ずかしいこと。
そんなことに振り回されて、生きていきたくない。
◆そうよ、彼だけが男じゃない。
世の中には、絶対に絶対に私のすべてを完全に理解し、
必要としてくれる男がいる。
もしかしたら、彼の存在を理想化しすぎていたのかもしれない。
わたしは、思ったよりずっとずっとずっと、強い女。
全面自己肯定的、何事にも積極的、挑戦的な女。
この仕事が楽しいし、やりがいも感じている。
だけど、だけど、だけどぅ・・・・だけど、やっぱりそれだけでは、
む ・ な ・ し ・ い。
心が、空っぽになってしまう。
●◎●◎●◎●◎●◎●◎●◎●◎●◎●◎●◎
「どういうこと?」
彼女は目の前のコーヒーカップを脇に置いて、彼に毅然と問い返した。
◆◆ 完 ◆◆
■このエピソードは、フィクション、ファンタジーです。
実在の個人、出来事とは一切関係がありません。
■まとめ:
お見合いからの二人の共同生活、結婚って、確かにちょっと面倒くさそう。
でも、そういうことを面倒がってたら、やっぱり結婚は難しい。
■結婚するということは、この面倒くささを、どれほどあなた自身
が引き受けられるかってことだということに気づいて欲しい。
■それにしても、本当の問題は、しあわせ、結婚相手を手に入れた
と思った時から始まっているような気がします。
■いつだって、人生はいい意味でも、悪い意味でも
「まさか!まさか!まさかあ!」の繰り返しです。
もう、人生に抵抗するのは止めましょう。
■世の中には、大きな流れがあって、それに逆らっても、結局
押し流されてしまいます。
巨大な力で生かされていることに気づけば、恐いものなどないはずです。
■わたしたちは、自分の意志と選択で「生きている」と
思ってはみても、しょせん、「生かされている」のでは?
■人生は、あなたが想像もできないくらい波乱万丈で、
1秒毎に流れていっています。
それを自覚してみましょう。あらゆることに葛藤しながらも。
■今回は、それができる、あなたのために書きました。
ウエディング・ベルが鳴る、来年のその日のために

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