結婚と障害者



■1998年冬の晴れた午後のことだった。

オーストラリアの首都キャンベラの湖畔で、クリスティン(56)とポール(59)はテーブルを挟み、向かい合って座っていた。


クリスティンは赤ワインのグラスを手に、慎重に口を開いた。

「大事な話があるの。実は私、アルツハイマー病の診断を受けているのよ。後、数年の命なの」


僅かな間をおいて、ポールが静かに言った。
「僕の父もアルツハイマー病で4年前に死んだ」

その日は、結婚相談所 を通して知り合った二人の初めてのデートだった。


■クリスティンは連邦首相府の局長だった95年、片頭痛に悩まされた。

精密検査でアルツハイマー病と診断され、すぐに退職。離婚暦があり、19歳から9歳まで3人の娘がいた。


進行性の病気との闘いで、次第に孤独感が募っていた。1998年、病気のことを隠し、キャンベラの 結婚相談所 に登録。

離婚暦、3人の子ども、元外交官の職歴など共通点が多いポールは2人目に紹介された相手だった。


「病気の話をしたら、その場でデートは終わると思っていた」とクリスティンは話す。

最初からポールを気に入っただけに、正直に打ちあけるかどうか迷った。


しかし、ポールは、「聞いても落ち着いていたよ。どんな病気かわかっているから『大丈夫』と心の中で声がしたんだ」と話す。

自分にない資質を持つ彼女を一目で好きになり、病気は障害にならなかった。

数週間後、ポールは、「結婚 して君の世話をしたい」と彼女に伝えた。


結婚への障害 はむしろ、周囲の理解を得ることにあった。クリスティンの家族や友人は当初、懐疑的だった。


親友はポールに、「あなたの目的は何?」と詰め寄った。

「君のお金目当てと思われたくない」

ポールは自分の家を売り、その金をクリスティンの家のローン返済にあて共同名義に変更した。


結婚と障害



■1999年8月に挙式。

結婚直後 から二人は、アルツハイマー病の患者を支援し、社会の理解を広げるための活動に乗り出した。

欧州、アフリカ、日本など、会議や講演活動で世界中を旅行。


精力的な活動は、クリスティンが国際アルツハイマー病協会の理事を引退した2005年9月まで続いた。

長寿化が進む先進諸国ではアルツハイマー病を含む認知症患者が増えている。


人口約2000万人のオーストラリアでも、認知症患者は現在約20万人で、2050年には3倍になるとみられる。

快活で聡明だったパートナーをむしばむ病魔と、どう向き合うか。


それは今や誰にでも起こりうる問題だ。


■クリスティンの場合、数年といわれた余命は診断から10年を越えた。

主治医は、二人が出会った数週間後の検査で「予測よりも進行が遅い」とし、診断をアルツハイマー病から前頭側頭型の認知症へ変えた。


現在、二人は、クリスティンの三女ミシェリン(20)と、オーストラリア東部ビーチメアの家で暮らす。

馬と犬、猫たちの世話は主に妻がし、夫が毎晩夕食を調える。病気は少しずつ進行し、衝動や感情を抑えられない時もしばしばだ。


夜遅く、突然家の大掃除を始めた妻を夜半過ぎまで手伝ったこともある。

妻が記憶の手がかりにするメモがなくなってパニックになった時は、ゴミ置き場のゴミをさらってメモを見つけ出した。


「日々後退していく自分を、あなたに理解してもらうのは闘いなの」と言う妻。

だが、夫は「昔の君を知らないから『こんな姿になって』と嘆くこともないよ」と笑った。


1月3日付読売新聞シリーズ「結婚は今 1」より


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■侮蔑的、だと批判があった痴呆症が、昨年2005年度から認知症と呼ばれることになり、そう現在呼ばれています。

認知症と認定されている人は、約170万人。


団塊の世代が高齢者の仲間入りをする2015年には、250万人になるといわれています。

とても、身近な病気なわけです。

昨年2月にロードショー公開された映画、ニコラス・スパークス原作
きみに読む物語」 も、アルツハイマー病になって、夫が認識できない年老いた妻を扱っていました。

同じく10月にロードショー公開され、大ヒットした韓国映画
私の頭の中の消しゴム」も、やはり若年性アルツハイマー病になった若き27歳の妻との悲しくも、切ない夫婦愛がテーマ。


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人生とは何か? 人生とは、思い出です。

思い出とは何か?思い出とは、「記憶」です。


ですから、記憶というものは、誰にとってもかけがえのないものです。過去の自分自身そのものなのですから。

認知症は、この記憶が消滅して、肉体的な死より精神、こころの死が先に訪れてしまうとても残酷な病です。


■さて、もし、結婚 を前提に お見合い をした相手、フィアンセが、こういう重荷を抱えているとわかったら、あなたは、婚約の解消 をしますか?

これからいくら楽しい思い出をつくり上げても、その思い出が消滅していってしまうわけです。


もし、結婚相手 がこういう重荷を抱えてしまったら、あなたは、離婚しますか?

今までにつくり上げた思い出が消滅してしまったわけです。


あるいは、逆に、あなたがこういう重荷を抱えたら、どういう行動をとりますか?

恋人に、フィアンセに、伴侶に、何を期待し、望みますか?


この重荷は、祝福された未来の 結婚 への、明らかな避けるべき障害ですか?


おそらく、解決方法の正解はない、でしょう。

たぶん、正解はありません。

きっと、正解はないはずです。


いい悪いの世界ではないですし、その当事者以外、第三者がとやかく言うべきことでもないと、私は思います。


■ただ、オーストラリアのお二人は、結婚しました。

「きみに読む物語」の主人公お二人は、夫婦一緒に天国に召されました。

「私の頭の中の消しゴム」の夫は、どこまでも妻を追いかけていきました。


二人にとって避けるべき障害、つながりを引き裂く障害とはなりませんでした。


男女間の愛はもちろん、奪うものではないですが、決して神から出てくるような、一方的に与えるだけの愛でもありません。

男女間に必要な愛は、相手が求めているもの、不足しているもの、不安定なものを補い合っていく、相互依存的な愛ではないでしょうか。


■今回は、それができる、あなたのために書きました。

とは言え、それがなかなか、できないんですよねえ、わかる、わかる!

でも、そこをなんとか踏ん張って、

今年こそ、ウェディング・ベルを鳴らすその日のために。
posted by スタートライン | お見合い豆知識